LENCONの初めの一歩
本当の姿
身障協会職員 永松 玲子(ながまつ れいこ)
※サリドマイドの薬害のため、両肩から数本の指が少し出ているだけの状態で左目は失明、右目も眼球振動があり弱視(近づけば人がいるか識別できるくらい)
幼い頃、近所の友達と遊んでいる時よく言われた言葉があります。「玲子ちゃんはこれできんよ。手がないやん!」、それは公園のブランコだったり、すべり台だったりしますが、その度に手を見せ、「手はあるやん!」と小さな喧嘩を繰り返しながら、少しずつできるようになっていました。
でも、その時いつも私には手があるのにどうしてみんな手がないって言うのだろうと、とても不思議でした。そう思う度に悔し涙があふれ、泣きながら何度も母に聞いていたことをかすかに憶えています。そして母はその度に私が母のお腹にいることを知らず、眠れない夜に1度だけ睡眠薬を飲んだこと、その薬が両手と目に影響があったと話してくれたことも憶えています。
両手の話を母に何度も聞き、その時はうなずいていたけれども、私の中ではたぶん認識できていなかったのだと思います。友達に言われる度に、いつも母に聞いていました。
でもある日、母に聞かなくていい日がやってきました。それは妹や近所の友達が幼稚園に行き、私1人が家で遊んでいた時、(その頃は障害のある子は幼稚園や学校に入れない時代でした)ちょうど前かがみでお絵かきをしている時に体が疲れてしまい何となく体を起こしました。その時に目の前に鏡があり、鏡に映った自分の姿を見て「え?え?足(にえんぴつ持って描いてる)!?」と思わず何度か見直しました。そして私から出た言葉はみんなと同じで、「あ、手がないやん!?」でした。
そしてその時やっと自分の体を理解でき、自分の本当の姿を知りました。その日を境に母に手のことは聞かなくなりました。
私が何かしようとする時は、友達の身長がすごく高く見えていたのも、足を使って動作をしようとするため、座っているということに気付いていなかったのです。そのことがやっとわかり、気持ちがすっきりしました。そして私の手は大きくならないのだということもわかりました。
大きくならない私の手。指が少しあるだけですが、間違いなく私の手です。ただみんなと違って腕の長さが短いだけで、体重がちょっと軽いかもしれません。(笑)なんて、秘かに喜んでいる私です。