公益財団法人 北九州市身体障害者福祉協会 理事長 竹田(たけだ) 英樹(ひでき)
障害のある人の社会参加を推進するために施行された「障害者差別解消法」は、令和3年5月に改正され、合理的配慮の提供が事業者にも義務化されることになりました。
この改正障害者差別解消法が令和6年4月1日に施行されるという制度の変わり目の大切な時期に、私は理事長という大役を仰せつかりました。
昭和48年7月に設立された当協会は、令和5年度に50周年を迎えました。
昔のことを振り返ってみると、私がまだ建築の仕事をしていた昭和53年、柴田(しばた)泰博(やすひろ)前理事長が、障害のある人の福祉映画の実行委員を募集しているという新聞記事を見て、実行委員に応募する電話をしたのが障害者福祉に関わるようになったきっかけでした。
それまでは、障害のある人がどのような状況に置かれているか何も知りませんでしたが、状況が分かるようになるとそれは酷(ひど)いものでした。車いすを使用している友人とお店に入ろうとしたら、店員から「車いすは他の人の迷惑になるので他の店に行ってください」と言われ、バスに乗ろうとすると運転手が車いすを見るやいなやドアを閉めて出発する、タクシーに手を上げてサインを送っても車いすを見ると停まってくれない、などなど…。
特に一番困ったのが、車いすで使用できるトイレが、街中にほとんど無いことでした。
このような障害のある人の置かれている状況を少しでも変えるために障害者福祉を仕事にしたいと思うようになり、昭和54年10月に当協会に入職しました。協会に入って2年後の昭和56年には「国際障害者年」を迎え、この年を契機に障害のある人たちの環境は良くなってきたと思います。私もそのような変化を間近で感じながら、平成26年に協会を定年退職するまでの34年間、障害のある人の社会参加に関わってきました。
国際障害者年から40年以上が経過しましたが、障害のある人へのハード面での環境は変わってきたものの、ソフト面で劇的に変わったかというと、決してそうではありません。
平成28年度に北九州市が障害のある人5,600人を対象に実施した『障害児・者等実態調査』の回答では「差別を受けたり、いやな思いをしたりしたことがある」と回答した人は約50%もおり、令和4年度に実施した調査でも約45%と、2人に1人がまだ何らかの差別を感じているという結果でした。
「地域社会の中で、障害のある人が安心し、生きがいを持って自立した生活を営むことができる社会の実現を目指す」というミッションを掲げる当協会の定款(ていかん)には「障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援する」取り組みがあります。
柴田前理事長からバトンを受け取った私は今後、協会の理念及び、国の「障害者差別解消法」、北九州市の「障害者差別解消条例」の考え方を基本として、障害のある人が安心して暮らすことができる社会を実現するため、協会の取り組みを進めていく所存です。
みなさまのご支援、ご協力をよろしくお願いいたします。