LENCONの初めの一歩
咽喉手術の日の記憶
永松 玲子
※サリドマイドの薬害のため、両肩から数本の指が少し出ているだけの状態で左目は失明、右目も眼球振動があり弱視(近づけば人がいるか識別できるくらい)
北九州市立足立学園(現・北九州市立総合療育センター)から九州歯科大学附属病院に移り、検査ずくめの毎日。
どれくらい時間が過ぎたのかわかりませんが、ある日看護師さんから「今からちょっと検査するよ」と言われました。
私はその時「まだ朝ご飯食べてないよ。ご飯は?」と尋ねました。「今日はご飯を食べられん日なんよ」と言われ、一度は納得したのですが、やっぱりそこは子ども。検査中に何度も看護師さんに「お腹すいた。でも今日は食べたらいけんのよね」と言っていたのを憶えています。
検査が終わり、病室に戻ってすぐ(と記憶していますが)、母から「看護師さんからこの薬を飲んでおいてねって」と薬を渡され飲みました。それから、母に絵本を読んでもらっていたのですが、だんだん母の声が遠くなっていきました。
ふと目が覚めた時、小さな部屋のようなところにいて、父もいたので「ここはどこ?」と尋ねました。すると「もうちょっと眠とっていいよ」と言われたので眼を閉じましたが、眠れませんでした。
しばらくすると、何人も看護師さんが迎えに来て私が寝ているベッドを動かし、どこかに連れて行かれました。私は怖くて目が覚めていることを伝えることができませんでした。
少し行ったところで大きな扉が開き、大きな部屋の1ヵ所に置かれました。その部屋は、右側も左側も金具がいっぱい。それを見た瞬間、恐さが倍増し、さらに声が出せませんでした。
ドクターや看護師さんは、私が睡眠薬の効果が既に切れ、目が覚めていることに気づいていません。「どうしよう、どうしよう、お父さん、お母さん、恐いよ~」って心が叫び始めた時、顔に布をかぶせられ口を開けられ、手術が始まってしまいました。
「ああ、これが手術なんだ。だから朝ご飯を食べたらいけんのやったんやね」って思った瞬間!咽に今まで感じたことのない激痛が走りました。私は思わず「痛い~~!」と泣き叫び、体も飛び起き、だんだんと苦しくなっていきました。
眠っているはずの私が泣き叫びながら飛び起きたので、ドクターも看護師さんも大慌て!私はすぐに病室に戻され、咽喉の出血の処置のため、腹ばいにされた状態で、目の前が真っ白になっていくのを自分で感じながら気が遠くなっていきました。