8 この本、おもしろかった!~わたしの一冊~
点字図書館を利用される皆さんがつなぐこのコーナー。前号の真玉さんから、今回は
やすもとさんへバトンが渡されました。みなさん、「新橋色」ってご存知ですか?
やすもとさんのお話は、そんな聞き慣れない色の名前から始まります。
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新橋色
「これ何色?どんな色?」自分が着ている服を指さして尋ねると、その友人は何やら本
を持ってきてページをめくり、服に当ててみて「うん!これが一番近い。新橋色だな」
そしてその色の解説を読んでくれた。
新橋色。へぇ~そんな名前の色があるんだ。たしか青緑と言われて買ったものだけど。
彼は、「おまえは明治の新橋芸者と同じ色の服を着てるんだな。なかなかいい色だよ」
それ以来、私は何かと彼に物の色を尋ねては、その本にある解説を読んでもらって、おか
しくて笑ったものだ。
ワインレッド
仕事中、ラジオから安全地帯の『ワインレッドの心』が流れてきた。
あの消えそうに燃えそうなワインレッドの心…と、あいかわらず苦しそうにしぼりだすよ
うに歌っているワインレッドというと、どこまでも深くて濃厚な赤を想い浮かべるけど、こ
の本によればワインレッドは、フランスのボルドーワインの色から来ていて、明るい赤紫。
そこで、ボルドーのワインを買ってきた。ボジョレーヌーボーじゃだめ。ボルドーワイン
なんです。
『ワインレッドの心』を聞きながら飲んでみた。
う~ん…よくわからない。
もう一杯。
やっぱりよくわからない。
……酔って寝てしまった。
ワインレッドの、あの時のあなたの心は今でもよくわからない。
すみれ色(バイオレット)
アメリカに留学してた子が、こんな話をしてくれた。
彼女は留学先の大学の図書館で、英訳の源氏物語を見つけたのだが、そこでは「紫の上」
が「マダムバイオレット」となっていた。
う~ん、確かに虹の七色では紫はバイオレット。そしてこの本では、バイオレットはすみ
れ色とされている……はたして光源氏は、紫の上のすみれのような可憐なところに魅かれて
いたのだろうか?
この本で紫は、他の基本色より少ないながらも32色紹介されている。藤色やラベンダー、
最近東京オリンピックやスカイツリーでなにかと用いられる江戸紫など。
源氏物語には「藤壺」も「葵の上」も出てくるし、訳者も苦労したでしょうねぇ…。
う~ん。
マダムバイオレットねぇ。
いっそのこと、紫の上は「マダムムラサキ」がいいんじゃないかって思ったりして…。
福田邦夫 著『色の名前事典』
この本には、色との出会いがあります。